リウマチ初期症状

薬物療法(副腎皮質ステロイド薬)
ポイント

●ステロイドとは、もともと体内で分泌されるホルモン
●ステロイド薬は、痛みやはれを速効で抑える
●副作用はあるが、対処方法もある

非ステロイド性抗炎症薬以上の効果

副腎
腎臓の上に、見のがしてしまいそうな小さな臓器があります。これが副腎で、その表面に近い部分が副腎皮質です。
副腎皮質では約50種類のステロイドホルモンがつくられ、体の働きを維持していますが、その中のひとつがコルチゾールです。炎症や免疫反応を抑えたり、糖質や脂質などの代謝を調節する働きをするホルモンです。副腎皮質ステロイド薬は、このコルチゾールを人工的に合成した抗炎症薬です。
ステロイド薬が炎症を抑えるメカニズムは、基本的には非ステロイド性抗炎症薬と同じです。痛みやはれ、発熱などの炎症反応をもたらす物質であるプロスタグランディンがつくられる化学反応を、非ステロイド性抗炎症薬より早い段階でストップさせるのです。
非ステロイド性抗炎症薬と違うのは、サイトカインが放出されるのを抑えたり、抗体がつくられるのを抑制するところです。ステロイド薬には、これほどの働きがあるだけに、非ステロイド性抗炎症薬とくらべると効果は絶大です。

症状を抑える切り札

ステロイド薬
ステロイド薬が、初めて関節リウマチの治療に使われたのは1948年です。痛みのために寝たきりだった女性患者が、ステロイド薬の筋肉注射で、3日後には歩けるようになりました。衝撃的な効果に、一時は、ステロイド薬さえあればリウマチは治ると思われました。
しかしその後、ステロイド薬には多くの問題があることが明らかになると、使用が大幅に制限されました。ただ関節リウマチにとって、ステロイド薬は有効性のある薬です。
現在では、初期に、痛みをコントロールする目的で短期的に使うケースが多くなっていますが、抗リウマチ薬が効かない人にとっては、いまでもステロイド薬の存在は不可欠です。こういった場合は、用量を調節しながら、副作用の少ない最低用量で使うのが一般的です。
※ステロイド薬の、主な効果をみてみます。

●抗炎症作用で痛みやはれを改善

プロスタグランディンやサイトカインといった、炎症にかかわる物質を抑え、病気の活動性をしずめます。ステロイド薬は非常に効果が高く、速効性があるので、服用を始めると、早ければ翌日には痛みやはれが治まるほどです。

●骨破壊を抑える

米国リウマチ学会の「関節リウマチ治療ガイドライン」 (2002年)では、低用量(プレドニゾロンに換算して1日10喝以下)のステロイド薬使用は、骨破壊の進行を抑え、機能改善に有効としています。しかし、たとえ低用量でも長期にわたって服用すると副作用が増えるため、早期に一定期間使用するのがベストです。

●精神への賦活作用

コルチゾール(ステロイド)は、やる気を起こさせるホルモンといわれます。ステロイド薬は痛みをとると同時に、病気のために暗く沈んだメンタル面に作用し、気分を明るく積極的にする働きもあります。

副作用について

ステロイド薬に限らず、薬には副作用がつきものです。なかでもステロイド薬には、副作用のイメージが強調される傾向があり、「できればのみたくない」「早く量を減らしたい」と思う人も多いようです。もちろん、副作用の問題を軽くみることはできないため、正しく理解することが必要です。

●軽い副作用は、あまり心配しない

よくあらわれるのは、顔が丸くふくらむ「ムーンフェイス(満月様顔乳)」 です。ステロイド薬は、体の脂質代謝に影響しますが、部位によって不均一に出ます。顔、首のまわり、肩、胴体など、体の中心部分の脂肪は多くなってきますが、手足など四肢の脂肪は少なくなってきます(中心性肥満)。
皮膚症状としては、口の周囲などのうぶ毛が濃くなる、吹き出物ができる、紫色の斑点が出る(紫斑)などがあります。また、食欲不振やだるさがあったり、逆に食欲が増進して体重が増えることもあります。むくみ、高血圧、多汗、月経不順、不眠などがあらわれることもあります。このような軽い副作用は、ステロイド薬の量を減らしたり、使用を中止すれば自然に改善するので、あまり心配はいりません。

●重い副作用には注意が必要

ステロイド薬は、使う量が多かったり、服用期間が長くなるほど重い副作用が出ます。


①免疫力が低下し、細菌やウイルスに感染しやすくなります。肺炎、腎孟炎、結核なども起こりやすいため、早期発見と早期治療が重要です。
②ステロイド薬を長く使っていると、骨からたんぱく質やカルシウムが流失して骨がもろくなります。関節リウマチに骨租しょう症の合併はつきものですが、薬の使用でさらに骨が弱くなります。ビスホスホネート製剤でコントロールします。
③外からステロイドホルモンを補給されることに体が慣れると、副腎皮質は怠けてつくらなくなります。このような状態で急にステロイド薬の量を減らしたり止めたりすると、ショック症状が起こることがあります。薬の減量・中止は、医師と相談しながら行うことが大切です。

低用量の使用であれば、問題は少ない

ステロイド薬は、ただ副作用をこわがるのではなく、薬の性質を理解した上で使うことが大切です。次のような方法なら、重い副作用は少ないとされます。


①プレドニゾロンに換算し、1日5mg程度の投与にとどめます。正常な人でも、毎日10~15mg前後を副腎皮質から分泌しているので、この程度なら問題は少ないと考えられます。ただし、1mgでも少ない量にする努力が必要で、やめられればベストです。
②いったんステロイド薬を使うと、離脱は困難になることが多いため、有効な抗リウマチ薬を見つけて併用し、ステロイドの減量をはかります。
③使用するステロイド薬は、比較的マイルドなプレドニゾロンやプレドニンにします。

関節内注入法について

関節リウマチのステロイド治療には、錠剤を服用したり、筋肉注射をするほか、少量の薬を関節へ直接注入する方法があります。


①頻繁に行うと副作用がありますが1回ごとの間隔を1カ月以上あければ、副作用は少ないとされます。
②炎症が強く、日常生活が障害されている場合や、痛みを早く止めたいときなどに行います。速効性があり、痛みは注射後30分以内に治まり、効果は1~2週間つづきます。
③ひじ、ひざなど大きな関節だけでなく、手の指など小さな関節に早い時期に行うこともあります。