血液検査(炎症反応・リウマチの活動性)
●血液は診断や治療のための重要な情報源
●新しいマーカーが利用できるようになった炎症検査
●血球の数は定期的に調べ、変化をチェック
血液は体内で起きていることを知らせてくれる
X線検査が形の変化を知る検査だとすると、血液検査は数倍の変化(量的な変化)をみる検査です。血液には、さまざまな細胞や物質が含まれていて、特に免疫にかかわる細胞や物質の多くは血液にありま酸素を体じゅうに届けて二酸化炭素と交換する赤血球、免疫の働きの中心的役割をする白血球、出血を止め血管を修復する血小板といった細胞があるほか、たんぱく質、糖質、脂肪、ミネラルなどの物質がとけ込んでいて、これらの動き(数値)は、体内の健康状態を敏感に反映します。
つまり、血液に含まれているものの量的変化をみれば、体の中で起こっていることを読み解くことができるます。
関節リウマチの場合も、血液検査から、病気を確定したり、ほかの病気と判別したり、病気がどんなレベルにあるか調べたり、薬の副作用をみるなど、多くの判断材料を得ます。次からは、関節リウマチで行われる血液検査の内容を詳しくみていきます。
「赤沈」「CRP」「MMP-3」について
関節リウマチは、関節内の滑膜に炎症が起こる病気です。そこで血液から、体内で炎症が起こっているか、その強さはどれほどかをみます。
炎症反応の検査は、治療中も重要です。炎症がコントロールできていない場合は、いまの薬では効果がないことを示し、使っている薬を見直す必要があります。
●赤沈(赤血球沈降速度)
静脈から採取した血液を、かたまらないように抗凝固剤を入れて、細長い管(ピペット)に移します。その管を立てておくと、赤血球は重いため下へ沈んでいきます。この赤血球の層が1時間に何ミリ沈むか、速度を調べます。正常値は男性で1~9mm、女性は3~15mm。これより10mm以上高いと、体内で炎症が起こっている可能性があります。関節リウマチでは、中期で30~40mm、高度期で80mm以上になるとされています。
日常の診察では30mm以上と以下で分け、関節リウマチの活動性がコントロールされているかどうかの目安にしています。
ただし赤沈は、貧血、感染症、がん、腎不全などがある場合や、妊娠している場合も高くなります。赤沈の数値だけで関節リウマチと断定することはできませんが、数値は炎症のレベルと連動しますので、病気の程度や治療の効果をみるには有効です。
【正常値】男性は1時間に1~9mm、女性は3~15mm
●CRP(C反応性たんばく)
赤沈の数値のあらわれ方には個人差があるため、同時にCRPをはかります。CRPとは、体内で炎症、感染、組織障害などの異変が起こると肝臓でつくられるC反応性ぱ
くのことです。異変が起こって12~24時間後に血液中にあらわれます。
正常値は「陰性(-)」。関節リウマチの炎症だけでなく、ほかの膠原病やウイルス感染症でも「陽性(+)」を示しますが、赤沈と違い、貧血の影響は受けません。関節リウマチの病状が悪くなっていると、赤沈倍よりもCRP値のほうが、正確にあらわれます。
【正常値】陰性(-)
●MMP-3
MMP-3とは、最近利用できるようになった滑膜増殖マーカーで、正式名は「マトリックスメタロプロテアーゼー3」といいます。これは軟骨基質の成分を分解するたんぱく分解酵素で、関節リウマチの関節のはれの程度を反映するとされます。MMP-3の血中濃度が正常値を超えていると、滑膜にはれが起こっていると考えられます。
【正常値】男性は120ng/mℓ以下、女性は60ng/mℓ以下
血液一般検査について
血液一般検査とは、血液中の血球細胞(白血球、赤血球、血小板など)の数を調べる検査で、「血算」とも呼ばれます。関節リウマチの活動性をみるほか、関節リウマチにともなう内臓の異常や薬の副作用などをみるために、定期的に調べられます。
●白血球の数
白血球は、免疫システムの中心的な働きをする血球細胞で、正常値は、男性で3500~9300個/μℓ(マイクロリットルは100万分の1ℓ)、女性は3800~1万100個/μℓです。関節リウマチでは白血球の数は増加傾向にありますが、思ったほど増えず、早期では7000個程度と、正常値の範囲にとどまります。しかし炎症が強くなったり、ステロイド薬の影響があると1万個以上になることもあります。また、血管炎をともなう悪性関節リウマチでも増加しするので、注意してチェックする必要があります。一方、3500個以下になると、薬の副作用や、全身性エリテマトーデスなどの他の病気が疑われs画正常値山 男性は【正常値】男性は3500~9300個/μℓ、女性は3800~1万100個/μℓ
●赤血球の数、ヘモグロビン値
赤血球は血液細胞の中でもっとも数が多く、酸素を体じゅうに運んで細胞に渡し、細胞から二酸化炭素を受け取って肺にもってくる働きをします。またヘモグロビンは、赤血球の中にある物質で、酸素をとらえる中心的役割をしています。
関節リウマチでは貧血をともなうことが多いため、赤血球とヘモグロビン値はくり返しチェックする必要があります。要があります。また、関節リウマチの活動性と、赤血球値・ヘモグロビン値は連動することが多く、活動性が高くなるほど数値は減少していくので、目安になります。
【正常値】赤血球値:男性は400万~540万個、女性は380万~490万個。ヘモグロビン値:男性は12.0~16.2g/㎗、女性は11.4~14.7g/㎗
●血小板の数
血小板は、出血が起こるとかたまって血管の破れた部分をふさぎ、出血を止める働きをします。関節リウマチでは、炎症があると血小板の数が増えます。さらに、病気の活動性が高く治療に対して激しい抵抗性があると、極端に多くなることがあります。逆に、減る場合は、薬による副作用が考えられます。
【正常値】男性は13.1万~36.2万、女性は13万~36万個/μℓ